下振れリスクに注意が必要な大豆市場
シカゴの大豆先物市場は、11月20日以降に騰勢を強め、1,040セントを超える、高い水準での高下が続いています。また、25日には今年6月16日以来、初めて終値が1,050セントを超え、1,054.50セントで取引を終えました。
この日の強い足取りの主な背景としては、中国の旺盛な需要を受けて11月19日時点の米国の大豆輸出検証高が前年同時期の4,091万3,000ブッシェルを大きく上回る7,378万7,000ブッシェルに達していることが挙げられます。また、米国、欧州の経済が緩やかな持ち直しを見せていることで、飼料用需要の増加観測が強まっていることも、その一因と言えるでしょう。
しかしながら、このような強い需要が見られながらも、大豆需給の中期的な見通しは弱気と考えられるのです。というのは、現在、生育が進行している南米諸国では、金融危機に伴う景気停滞気においても、大豆価格が他穀物に比べて高値で推移した結果、その利潤性を好んだ農家の生産意欲が強まっているからです。
この生産意欲の高まりを受け、今年度の南米諸国の大豆生産量は過去最大に達すると予想されています。さらに、この南米諸国の大増産の結果、09~10年度における世界の大豆生産量が、過去最大となる2億5,023万3,000トンに達することが見込まれ、その結果、期末在庫率も適正水準である14~15%を大きく上回る24.59%に達すると予想されているのです。
南米諸国の大増産が大豆価格に与える影響は、供給量の増加、という点だけではありません。季節柄、米国の裏作に当たる南米諸国での大増産は2月、3月の時期に市場に大量に大豆が出回り、その時点の価格を圧迫する要因になりかねません。さらに、2月、3月という米国の農家がその年の作付を決定する時期における価格の下落は、6月以降に本格化する米国の大豆作付面積縮小を促す可能性もあります。
また、需要という側面から見ても、輸入国側の足元の供給が潤沢であれば、米国産よりも廉価であるうえ、中期的には大量の供給が見込まれる南米産大豆の購入意欲が高まり、結果として米国産大豆の買い控えという現象を生み出しかねないのです。
このように南米諸国の大増産が見込まれるが故に、ファンダメンタルズが弱気と見られながらも、現在、シカゴ市場において大豆価格が上昇している理由は投機資金が流入していること、が挙げられるでしょう。
CFTC(全米商品先物取引委員会)の発表によると、11月19日時点の大豆市場における大口投機家の買い越し数は、9万1,111枚で、2008年7月7日以来の最大数に膨らんでいます。また、大口投機家の市場占有率は、金融危機の影響でリスク回避嗜好が高まっていた年初時点の31.07%に対し、37.64%に上昇するなど、投機資金の流入が鮮明となっているのです。
このような投機資金の流入のなかでも、スワップ・ディーラーの買いポジションが、2008年7月15日以来、最も多い12万6,313枚に達していることが注目されます。というのは、2006年以降の推移を見ている限り、スワップ・ディーラーの買いポジションは、大豆価格の上昇を先取りする形で増加するものの、このポジションが減少傾向に転じ、その傾向が続くようだと大豆価格が大きく下落する傾向が見受けられるからです。
言い換えるならば、スワップ・ディーラーは価格上昇の波を自らのポジションを拡大することで作り出す一方、価格の上昇が見られればポジションの縮小に向かい、この動きを後追いする形で価格が下落する、と考えられるのです。なお、CFTC報告における生産者・商業者筋、スワップディーラー、マネージドマネー、その他、という4区分のなかで、スワップディーラーの買いポジションが最大となっています。また、取組におけるスワップディーラーの買いポジションの比率は28%を占めていることもあり、大豆市場においてスワップ・ディーラーのポジションは大きな影響力を持つと言えるでしょう。
そのため、スワップ・ディーラーがポジションを膨らませている現時点では、大豆価格は高値で推移する可能性が高いものの、同時に、そのポジションが縮小すれば価格が下落するリスクも同時に含まれているのが実状と思われます。
11月19日時点の取組高は44万3,987枚で、10月半ば時点の47万枚台に比べれば、まだ増加の余地があると思われます。しかしながら、ファンダメンタルズを伴わず、その動きがある特定のポジションに依存している場合は価格が大きく揺らぐ可能性がある点には注意すべきでしょう。足元の状況を見る限り、投機資金の流入はまだ続く可能性が高いと思われますが、大豆価格が上昇すればするほど、その下振れリスクが大きくなっている点を十分に留意しておく必要がありそうです。
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