騰勢を強めるも先行き不透明感の強い白金
現地16日の取引においてNYの白金価格(中心限月)は、昨年9月のリーマンショック以降、初めて1,400ドルを突破しました。続く17日の取引も続伸となり、一時は1,464.60ドルと、2008年9月上旬以来の高値を記録しています。
白金価格は17日、18日の2日間の取引で、73.8ドルの上げ幅を記録したことになりますが、史上最高値を更新し、1,100ドル台で推移している金のこの2日間の上げ幅が22.7ドルだったことと比較すると、白金の上げ足の強さが窺われるでしょう。
このように白金価格が急上昇している理由としては、ドル安が進行したこと、そして株式市場が上値追いとなったことでリスク許容度が高まり投機資金が流入したこと、が挙げられます。特に、現在の白金は投機資金が流入し易い状況にあることには注意が必要でしょう。
というのは、白金は元々、金に対して割高で推移していたからです。過去の東京市場を振り返って見ると、東京ではコモディティ・バブルの様相が高まっていた2008年3月上旬には白金価格が金の2倍以上の水準に達していました。なかでも2008年3月5日には、白金が7,327円となったのに対し、金は3,245円となっていたため、値開きは4,082円に達していたのです。
そのため、投資用需要の大幅な増加を受けて金価格が上昇している現在の価格水準(NYでは金が1,100ドル台、白金が1,400ドル台、東京では金が3,200円台、白金が4,000円台)を見る限り、白金が金に対して割安な状態にあると考えられ、これが投機資金の流入を招き易い一因となっているのです。
なお、この白金と金価格の差が縮小したことで見られる動きは投機資金の流入だけではありません。ジョンソンマッセイ社の報告によれば、中国では金価格に対し白金が割安との見方が広まったことで、宝飾用需要そして卸業者による在庫確保の動きが活発化したことで大幅に伸びることが予想されています。そのため、同国の今年度の最終的な白金需要は、前年比で106%増の175万オンスが見込まれています。
また、この中国の宝飾用需要増加が影響し、今年度の世界の宝飾用白金需要は、2002年以来初めて増加に転じるばかりか、前年度に比べて80%と大幅に増加した245万オンスに達するとの見方も浮上しています。
しかしながら、このような宝飾用需要の増加という明るい要因があったとしても、白金価格の今後の見通しは不透明感が強いと考えられるのです。というのも、白金は自動車用触媒としての需要が全体の60%前後を占めているため、景気回復とこれに伴う自動車販売台数の増加が見込まれない限り、白金の需要は頭打ちとなる可能性が高いと考えられるからです。
なお、中国の自動車生産台数が年間2,000万台に達したことが明らかとなっているとはいえ、欧州では自動車需要の減少と金融危機の影響による資金不足を受けて備蓄確保の動きが停滞しているため、今年度の白金需要は前年比で45.7%減少した107万オンスに留まることが予想されています。世界有数の自動車大国である米国、そして環境に対する意識が強い上、ディーゼル車が普及している欧州での需要が回復しない限り、白金需要が順調に増加すると見込むのは困難と思われます。
特に、景気回復に至る前に中国の旺盛な需要や金との価格差に目をつけた投機資金の流入を受けて白金価格が上昇するようであれば、米国、欧州などの自動車触媒用としての白金備蓄を確保する、という動きは更に停滞する可能性があることには注意すべきでしょう。
なお、現在は好調となっているとはいえ中国の宝飾需要も、金に比べて割安感が強まったことが背景となっているところを見ると、白金価格が上昇し、金価格との値開きが従来のように拡大するにつれ、減退するリスクがあることも留意すべきと思われます。
白金は金に比べて生産国が偏っているため供給は安定しておらず、過去に経験したように主要生産国である南アフリカでストや停電など生産に支障をきたす事態が発生した場合には、供給不足に陥る可能性が高い貴金属です。しかしながら、外貨準備の一部とされる金のように通貨、そして安全な投資先としての役割に関する公的機関のお墨付きがないところが白金の弱いところと言えるでしょう。
ジョンソンマッセイ社は、14万オンスの供給過剰が見込まれる今年の状況から来年には一転して、若干の供給不足に陥る可能性を指摘しています。この見通し、そして不安定な供給状況という白金が持つ従来の背景は引続き価格を支える要因になると見られるものの、景気回復とこれに伴う自動車用触媒としての需要増加の見通しが強まらない限り、その先行きは不透明感が強いように思われます。
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