次第に強まるコーン価格下落の圧力
現地12日に発表された米国農務省の需給報告では、世界のコーン生産量予測が前回発表の7億8,983万トンから7億9,633万トンに引き上げられました。これは、南アフリカ、EU27ヶ国の生産量がわずかながら引き下げられたものの、米国の生産量が前回予測の3億1,218万トンから3億2,414万トンへ、と1,196万トンもの上方修正となったことが背景となっています。
この1,196万トンという量は、09~10年度において世界第3位の生産量となることが見込まれている南アフリカの生産量1,050万トンを上回るものであることから、いかに大きな修正であるかが想像できます。
米国農務省では、今回の需給報告で米国の生産量がこのように大幅な上方修正となった根拠として、イールド(1エーカー当たりの平均生産量)が前回予測の153.4ブッシェルに対し、160.4ブッシェルという過去最大のイールドを記録した04~05年度に次ぐ、159.5ブッシェルが予想されていることが挙げられます。
実は、今春の作付初期段階では長雨の影響でコーンの作付は例年に比べて遅れを取っていました。以前であれば、作付けが遅れることは発芽が気温が上昇する時期までズレ込み、結果としてイールドが低下する、というのが通説でした。
それが、遺伝子組み換え種の登場と普及に伴い、作付が遅れてもイールドに影響はないとの見方へと変化が見られていました。しかしながら、今年の状況を見る限り、イールドに影響がないばかりか、作付が遅れても豊作になる可能性が高まると、作付遅れに対する見解はさらに変化したように思われます。
これは、遺伝子組み換え技術の発展により熱波、干ばつ、長雨、冷夏、害虫、農薬、に対する耐性が高まったことが、まずその背景として挙げられます。さらに、この耐性の高まりは、従来は作付が遅れればイールドの低下を嫌ってコーンよりも作付時期が遅い大豆へと生産をシフトさせていた農家に対し、コーンの作付けが遅れてもイールドが低下しない、という安心感を与えた結果、初期段階での天候不良を原因とした農家の作付シフトの動きが低下したこと、が背景にあると考えられます。
このような農家の生産体制の変化を受け、09~10年度の米国コーン生産量は過去最大に達すると予測されていると考えられるわけですが、コーン価格にとって重石になってきそうなのは、この生産量だけではありません。
生産量以外のコーン価格を圧迫する要因としては、米国農務省が前年度と同様に米国内のエタノール生産用コーン消費に関して現時点では強い姿勢を見せながらも、エタノール生産用コーン消費量予測は前年度に経験したように、これから下方修正される可能性があることが挙げられます。
米国農務省は、当初(08年5月発表時点)は40億ブッシェルと予測していた08~09年度のエタノール生産用コーン消費量を36億5,000万ブッシェルまで下方修正しています。もちろん、昨年9月に発生した金融危機とその後の世界経済の低迷が影響し、エタノール需要が低下したことが下方修正の主要因となっています。
そのため、現在42億ブッシェルと予測されている09~10年度における米国のエタノール生産用コーン需要が、必ずしも下方修正されるとは限りません。しかしながら、原油価格がバレル当たり120ドルを超えていたうえ、世界的な経済成長が見込まれていた08年5月時点でさえ、予測されていたエタノール生産用コーン消費量は40億ブッシェルだったことを考慮すると、景気に底打ち感があるとはいえ、回復が確実とはいえないほか、原油価格が70ドルで頭打ちとなっている現段階で42億ブッシェルの需要を見込むのは、楽観的な見方のように思われます。
現在、米国中西部ではコーンはデント、ダウ、と結実期を迎えており、生育ペースは例年に遅れているものの、生育状態は例年よりも良好、と伝えられています。今年は、コーン自身の需給に加え、小麦が過去最大級の豊作になる、との予測も発表されています。一方、中国では主要生産地である吉林省で干ばつが広がっている、という懸念材料も浮上していますが、同国はコーンの自給率を出来るだけ100%に近い水準で安定させる、強い姿勢を見せているだけに、コーン需給に対する影響の度合いに関する現時点での見通しは、不透明感が強いと言えるでしょう。
過去最大となる米国の生産量予測、そして楽観的と思われる米国内のエタノール消費量予測、世界的な小麦の生産状況を見ている限り、現時点でも停滞しているコーン価格に対する圧力が次第に強まるように思われます。
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