注目される金市場で影響力を強めた中国の動向
米国財務省の発表によれば、世界最大の米国債保有国である中国の米国債保有高は3月末時点で、7679億ドル(約73兆7,184億円、1ドル=96円)に達しています。しかしながら、米国の住宅市場は最悪期を脱したと見られるほか雇用情勢もわずかながら改善されるなど、経済に底打ち感が出てきたとはいえ、縮小した個人消費は依然として低迷しており、米国の景気が回復に向かっているとは言い難い状況が続いています。
このような米国の経済情勢のなか、中国では保有する米国債の価値低下が根強く懸念されています。特に、金融危機により米国経済の底が見えない時期にはその声が強く聞かれていましたが、なかでも、今年3月には中国人民銀行の周小川総裁が「ドルに替わる新基軸通貨を創設が必要」との見解を発表したことは記憶に新しいところです。
さらに、7月半ばには中国の外貨準備高が2兆ドルを超えたことが明らかとなりました。このように莫大な米ドル資産を保有する中国が、米国経済の動向次第で保有する資産の価値が損なわれるリスクに備える動きを見せるのは当然のことと言えるでしょう。その一例として、今年5月には環球時報紙が中国政府は長期債から短期債への切り替えを進めている、と報じたことが挙げられるでしょう。
同様に米ドル資産のリスク分散措置として実施され、金市場に大きなインパクトを与えているのが、金準備高の大幅な増加です。今年4月24日に新華社通信が中国国家外為管理局の胡暁煉・局長による、として伝えたところによれば、中国の金準備高は2003年末時点の600トンに対し、1,054トンへと大幅に増加しています。
これにより、中国の金保有高は世界5位まで躍進したことになります。ただ、それでも金の外貨準備に占める保有率は1.8%と、米国の78.3%、ドイツの69.5%を大きく下回っているほか、保有率が低いアジア諸国のなかでも、日本の2.1%、台湾の3.8%よりも低い水準に留まっています。
中国では外貨準備が1兆ドル規模に達したころからドル資産のリスク分散が必要、とする発言が聞かれており、今回の発表で外貨準備の増加に伴って金保有高が実際に積み増されていることが明らかとなりました。しかしながら、現在の保有率に低さに加え、今後も世界の工場として貿易黒字を示現し外貨準備が拡大する可能性が高い限り、同国が引き続き、金保有高を引き上げ続ける可能性が高く、旺盛な需要は金市場にとって目が放せない要因となってきそうです。因みに、ECB(欧州中央銀行)は加盟国中央銀行に対し、金保有高の目安となる水準について15%としているようですが、中国の金保有率が15%に達するためには、あと約26兆円分の金(約8,876.74トン分相当)が必要となってきます。
なお、中国の需要が顕著なのは金準備高という面だけではありません。GFMS社の発表によれば、今年第1四半期における金需要量は、前年同時期に比べて2%増加した105.2トンに達し、インドを抜いて世界最大の金消費量を記録しています。この時期は、安全な投資先としての金需要が膨らみ、金価格が1,000ドルに向けて上昇していたうえ、世界的な景気後退に対する懸念が強かっただけに、中国の需要の旺盛さが窺われるところです。
一方、供給という側面を見ても中国の影響力は年々強まっています。これまで、世界最大の産金国と言えば南アフリカでしたが、同じくGFMS社の発表によると2007年以降は、中国が世界最大の産金国としての地位を誇っています。中国の金生産量が100トンに達したのは1995年ですが、それから12年を経て世界最大の生産量を示現したことになりますが、新規設備投資が拡大したとして、2010年には年間産金量は300トンに達すると予測する声も上がっています。
なお、同国の金産業の大きな特徴として挙げられるのが、生産量が増加しても、そのほとんどが自国内で消費され、輸出として国外に出回る量は限定されている、という点です。そのため、世界の需給という点から見れば、中国の生産が大きく影響を及ぼすことはないように思われます。しかしながら、年間の金生産はある程度の目標量があるとはいえ、確定されたものではないこと、そしてこれまでの年間生産量は年間需要を下回ることが多いばかりか、販売規制が緩和されたことが今年第1四半期の中国の金需要増加を促した一因、ともなっているだけに、今後は中国の金輸入が増加する可能性が高まっていることも注意が必要でしょう。
従来、世界的な金の需要は9月~12月にかけて膨らみ、これも一因となって12月にかけて金価格が上昇する傾向が見られています。インドの需要落ち込みが明らかとなっているだけに、需要面、供給面の双方で影響力を強めている中国が今後どのような動きを見せるのか、注目されるところです。
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