需給報告に見る大豆価格上昇の可能性
現地7月10日に米国農務省は、世界、そして米国内の需給を予測した需給報告を発表しました。今回の発表で注目していたのは、前回6月の発表時にこれまでにない危機的状況を示す3.8%とされた08~09年度(08年9月1日~09年8月31日)の米国内大豆期末在庫率、そして08~09年度の需給ひっ迫のあおりを受けると予想されている09~10年度(09年9月1日~10年8月31日)の米国内の大豆需給予測です。
その期末在庫率は08~09年度が前回予測と同じ3.8%に据え置かれました。ただその一方で、09~10年度の期末在庫率は前回予測の6.8%から8%に引き上げられています。この期末在庫率引き上げの根拠となっていたのが、作付面積が前月予測より150万エーカー引き上げられたこと、そしてこれに伴う生産量の増加です。
ただ、ここで気になるのが、米国農務省が09~10年度の大豆のイールドをエーカーあたり42.6ブッシェルという高い水準を見込んでいる点です。これは42.7ブッシェルを記録した06~07年以来の高水準です。また、その後の07~08年度、08~09年度には、遺伝子組換種の導入比率が高水準を維持しているにもかかわらずイールドが落ち込んだことが示すように、安定して維持するには難しい水準と考えられるのです。
特に、最新の作柄報告によれば大豆の開花率は昨年同時期の25%、例年の43%を下回る24%に留まっている点は、この生育遅れにより熱波によるダメージを受ける可能性が高い点、そして大豆の生育に最も悪影響を与えるとして例年懸念される熱波は、8月に襲来する可能性が高い点には注意が必要です。
このように、すでに7月の受粉期を迎えているコーンに比べれば、大豆は依然として高い天候リスクを抱えています。それだけに、米国農務省が現時点で42.6ブッシェルという高水準のイールドを予測しているとはいえ、今後、このイールドが下方修正される可能性を、充分に考慮しておいた方が良いように思われます。
その一方で、引き続き注意したいのが、旺盛な中国の大豆需要です。08~09年度は南米諸国で大豆が不作となった影響を受け、中国の大豆需要は米国産に集中しています。その結果、09年7月9日時点における中国の米国産大豆輸入量は、オリンピックイヤーで在庫確保のために輸入量が大幅に増加した、とされる07~08年度を約41%上回る1776万トンに達しているのです。
なお、同じく7月10日時点における米国の大豆輸出量は総計で約3,430万トンとなっています。つまり、米国の大豆輸出の半分は中国向けで占められている状況にあるわけですが、このような中国の旺盛な需要の結果、現時点の米国の大豆輸出量は、7月の需給報告で示された08~09年度の輸出量12億6,000万ブッシェル(約3,427.2万トン)を上回る量に達しているのです。
特に、価格に対して敏感な反応を見せることで知られていながら、価格高騰時でさえ旺盛な需要を見せていた中国の業者の買い意欲が、価格下落によって高まる可能性があることを考慮すると、米国農務省が需給報告で示している08~09年度の年間輸出量には疑問を感じざるを得ません。
また、09~10年度の輸出量は今回、前回予測の12億6,000万ブッシェルから12億7,500万ブッシェルに引き上げられていますが、実のところ、米国農務省の需給報告における輸出量予測は、週間の輸出状況を見ながら上方修正される、といういたちごっこを繰り返しています。そのため、中国が引き続き旺盛な需要を見せるようであれば、09~10年度の輸出量予測は更に引き上げられる可能性を充分に秘めている、と思われます。
なお、実際に輸出量予測が引き上げられた場合、その他の需要もしくは供給による調整が無ければ期末在庫量が減少することを意味します。08~09年度の期末在庫量引き下げは09~10年度における期初在庫量の下方修正を意味しますが、これを補充するだけの供給が確保できなければ、8.0%に引き上げられた09~10年度の期末在庫率が引き下げられることになる点には充分に注意が必要です。
現在、シカゴ市場では米国の経済見通しに対する不透明感をイヤ気したリスクマネーの撤退も影響し、大豆価格が下落しています。また、一時的に250セントに迫る水準まで拡大していた旧穀限月と新穀限月間の値開きも次第に縮小してきましたが、それでも7月14日時点の値開きは156セントと比較的、拡大した状況にあります。
しかしながら、09~10年度の需給予測には上記のような修正の余地が依然として残されていることを考えると、10セントを下回る新穀限月の現在の水準は低過ぎるように思われ、旧穀と新穀の値開きの修正を含めた価格の調整が行われる可能性が充分にあると考えられます。
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