コーン価格上昇に圧迫される米国のエタノール産業
4月下旬から5月半ばにかけて米国の主要コーン生産地である米国中西部では土壌水分が過剰な状態となり、作付が例年よりも大幅に遅れていました。これに加え、現地5月12日には米国農務省が09~10年度の米国期末在庫率は9.1%と再び一桁台に落ち込む(その後発表された6月10日付けの予測では8.7%へ下方修正)、との強気な需給見通しを発表しました。このような要因が手掛かりとなって、シカゴ市場ではコーン価格が5月上旬から6月にかけて上昇し、6月2日には約8ヶ月ぶりの高値となる450セントに達しています。
このようなコーン価格の上昇は、コーン生産者にとっては好ましいもので、コーン生産に対する意欲を高める要因となります。しかしながら、その一方でコーンを加工して商品を生産している側にとって、価格上昇分を転換できなければ、コスト高により利益が圧迫されることを意味しています。
このような利益圧迫が米国のコーン需給にも大きな影響をもたらす産業として挙げるならば、やはりエタノール産業でしょう。というのは、米国のコーン需要のうち食用需要はほぼ成熟した状態にあるため年間成長率は一桁台に留まっているほか、飼料用需要は小麦が大減産となれば代替用としての消費が増えるものの、大勢的には減少傾向にあります。
しかしながら一方のエタノール生産用コーン消費に関しては、その成長率は今年度に関してこそ9.33%に落ち込むと予想されているとはいえ、2000年~08年度の9年間に渡って二桁台の成長率を維持するなど、米国のコーン消費拡大の牽引役となっているからです(数値は米国農務省の発表に基づく)。
そのエタノールの価格は、原油を始めとするエネルギー価格が低迷していたことも影響し、今年に入ってからは5月までの約5ヶ月に渡りガロン当たり1.6ドルを前後する状況が続いていました。同じ時期の価格を過去と比較してみると、2007年度がおよそ2.10ドル、2008年度が2.2ドル前後となっています。これは、生産コストが高いため小売価格がガソリンに比べると割高となるエタノールの消費は、ガソリン価格が低迷している状況では停滞する傾向があることが一因と考えられます。
このようにエタノール価格が低迷した結果、今年1月~5月初旬におけるエタノールの平均生産マージン(ガロン当たり)は、前年同時期の約1.31ドルに対し、61.15セントまで落ち込んでいました。
その後、5月上旬から6月上旬にかけてコーン価格が上昇したのは前述の通りですが、この間に原油価格は50ドル台から70ドルにかけて大きく上昇したにもかかわらず、エタノール価格の上昇幅は1.65ドル前後から1.75ドル前後へと、わずか10セントに留まっています。その結果、わずか1ヶ月の間ではありますが、5月8日時点には53.6セントだったエタノールの生産マージンは6月5日には48.8セントまで圧迫されているのです。
また、このマージンは原料と製品の価格から割り出されているため、設備投資費、光熱費などのコストが含まれて居ないことを考慮すれば、多くのエタノール業者は採算が合わない中でエタノール生産を行っているであろうことが推測されます。
なお、RFA(米国再生可能燃料協会)の6月16日付の発表によれば、現在の米国のエタノール稼動生産量は107億9,704万ガロンであるのに対し、稼動生産能力は126億3,840万ガロンとなっており、現在の設備稼働率は85.4%前後に留まっている、つまりこの稼働率でも対応できるほどエタノールの需要が停滞していることが分かります。
米国農務省は09~10年度のエタノール生産用コーン消費量を、08~09年度の37億5,000万ブッシェルを上回る41億ブッシェルと予想しています。しかしながら、原油価格の高騰がエタノール消費を後押ししていた08~09年度でさえ、原油価格の下落や金融危機による消費の落ち込みが影響し、年度末にかけてエタノール生産用コーン消費量予測は徐々に引き下げられました。
オバマ政権が環境問題に対し、どのような政策を今後実施していくかという点、そして景気の回復時期とその時の原油価格動向に注目する必要があるでしょう。とはいえ、原油価格が70ドルに達し、全米のガソリン平均小売価格が2.6ドル台まで上昇しても、エタノールの生産意欲がそれほど高まらなかった、という状況は、米国農務省が08~09年度に行ったように、エタノール生産量予測が下方修正される可能性、そして米国エタノール生産の先行き不透明感を強めている、ということに留意したいところです。
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