高値往来でも懸念される原油需要の伸び悩み
原油の高値圏での往来が続いています。4月以降の原油価格は時おり修正を入れながらも上昇傾向を維持し、現地6月10日以降の取引では70ドルを維持しての往来が続いています。この強気な原油市場の動向は、商品市場全体のムードを強める役割も果たしていました。
この原油価格上昇観測を支える一因となっているのが景気底打ち観測の強まりと、本格的なドライブシーズンの到来による需要増加期待、さらには、米国そして日本国内での在庫量の減少です。
例えば米国エネルギー省発表の米国内原油在庫量の場合、5月1日に3億7,520万バレルを記録して以降は減少傾向を強め、最新報告の6月5日時点では3億6,160万バレルまで落ち込んでいることが明らかとなっています。
また、本格的なドライブシーズン入り前に減少に転じたガソリン在庫の場合は、2億1,744万9,000バレルを記録した4月3日以降は一貫して減少し、6月5日時点では2億164万9,000バレルと発表されています。
このように米国内の原油在庫量が減少傾向に転じたことに伴うように、原油価格が上昇し始めている点を見ると、在庫の減少を受けて市場の需給に対する印象が好転している様子が窺われます。
というのも、金融危機が発生した後は、世界的な石油需要の落ち込みに対する警戒感が強かったうえ、この需給に対する悲観的な見通しを裏付けるように米国、そして日本では原油を始めとする石油在庫量の高止まりが続いていたからです。
ただ、だからといって現在の在庫状況が必ずしも供給サイド、需要サイドの双方からの影響を受けて減少に転じているわけではない点には注意が必要です。というのは、現時点における米国内の原油在庫量は、需要サイドの働きかけよりも供給サイドの引き締まりが大きな影響を及ぼしていると考えられるからです。
例えば、原油在庫の場合、供給面を形成している主な要因としては、米国内の産油量、輸入量が挙げられます。そのうちの米国内産油量の場合、価格が上昇し始めた今年4月下旬~6月5日間の平均産油量(1日当たり)は約532万6,000バレルであるのに対し、昨年同時期の平均産油量は510万7,000バレルだったため、今年の産油量が増加(前年度比21万9,000バレルの減少)していることが分かります。
ただ、同じ時期における輸入量(1日当たり)を見ると、前年度の平均が977万8,000バレルとなっているのに対し、今年は923万3,000バレルへと減少(前年度比54万5,000バレルの減少)した結果、輸入量の減少幅が産油量の増加を上回り、米国内の原油供給量自体が前年度を下回る状況になっているのです。
さらに米国内の原油需要の弱さを示唆する要因として注目したいのが、原油処理量の状況です。というのは、同じ期間内における米国内の原油処理量は前年同時期の1,509万バレルから1454万7,000バレルへの減少を記録しているからです。これらの状況からは、需要サイドが落ち込んでいるものの、それに足並みを揃えるようにして供給が絞られた結果として原油在庫が減少している。つまり、需要増加が在庫の減少を促す強気な需給状況とは異なる様相にある現状が浮かび上がってきます。
また、米国内のガソリン在庫量は2億1,260万バレルを記録した4月下旬時点に対し2億160万バレルまで減少しています。しかしながら、その一方で4月下旬~6月5日時点の生産量(1日当たり)は前年同時期の平均896万5,000バレルを下回る888万7,000バレルに留まると同時に、この時期の出荷量は前年平均の930万2,000バレルから913万バレルに落ち込むなど、弱い需要サイドに合わせるように供給が引き締められることによって在庫が減少している、という原油と同様の状況にあることが分かります。
需要期本番に株式市場の高止まりが追い風となって、今後の石油需要の増加を期待する声も聞かれています。また、このような強気な声が、70ドルを超えるという原油の高価格水準を支える要因となっていますが、供給サイド、需要サイドの双方から現在の需給を見る限り、需給が強気な状況にあるとは言い難いのが実情と考えられるのです。
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