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危機の様相が一段と強まる米国の大豆需給

 シカゴの大豆市場では、上値を追う展開が続いています。中心限月の7月限は今週に入ってから1227セント(1日の通常取引)の高値を付けていますが、これはリーマンショック前の昨年9月5日に1232セントをつけて以来の高値となります。

 大豆以外に金融危機前の水準まで価格が回復した主要な商品は、金融危機以来、投資用としての人気が高まっている金、そして世界最大の生産国であるインドの減産が影響し需給の引き締まりが見込まれている粗糖、と僅かな商品に限られています。ただ、大豆がこれらの商品と様相を異にしているのは、日を追うにつれ、さらに価格が上昇する可能性が高まっている点です。

 すでに約9ヶ月ぶりの高値に達しているにもかかわらず、より上値を目指す可能性があると考えられる理由は、米国の需給状況にあります。米国農務省(USDA)は現地5月11日に発表した需給報告において、08~09年度の米国内大豆期末在庫率(09年8月31日時点の期末在庫率)を前回予測の6.7%から4.3%に引き下げました。一方の09~10年度の期末在庫率に関しては、前年度より回復するとして7.4%と発表しています。

 通常、期末在庫率は約50日分の在庫に相当する14~15%が適正、と考えられています。そのため、4.3%という期末在庫率、在庫日数に換算すると僅か15日分程度に過ぎないと予想されていることが、いかに危機的な状況にあるか、を示唆しているか、お分かり頂けるでしょう。

 しかしながら問題なのは、すでに危機的と予想されている需給状況が更に悪化する可能性が日増しに高まっていることです。その理由としてまず挙げられるのが、好調が続く米国の大豆輸出です。

 同じくUSDAの発表によれば、5月29日時点における米国の08~09年度大豆輸出成約累計高は約3,376万トン。この成約高が注目されるのは、前年同時期の2,971万5,800トンを約13.6%上回っているうえ、この時期の輸出量としては過去最大に達しているからというだけではありません。

 実は、この輸出量は8月31日の穀物年度末まであと3ヶ月という期間を残している現時点において、前述の需給報告においてUSDAが想定している08~09年度の年間輸出量12億4,000万ブッシェル(約3,374万7,220トン)をすでに上回っているのです。

 このように輸出量が大幅に増加しているのは、2000年代に入ってから大豆輸出国として米国に肩を並べるまでに成長したアルゼンチンで約30%の減産が見込まれているほか、同様に大豆輸出大国であるブラジルでも減産に見舞われた結果、米国産大豆の代替需要が増加していることが背景になっていることは、これまでにも述べてきた通りです。

 なお、ブラジル、アルゼンチンの台頭が著しい2001年~02年以降の推移を見ると、8月末時点の米国の大豆輸出量は5月末時点に比べて平均で7%程度の伸びを見せる傾向があります。この平均値を基にして割り出せば、米国の08~09年度年間大豆輸出量は、最終的に3,600万トン台(約13億2,000万ブッシェル)に達すると予想されることになります。また、最も輸出量が伸びなかった03~04年度を参考にした場合の最終的な輸出量は約3,430万トン(およそ12億6,000万ブッシェル)となります。

 それぞれのケースで期末在庫量と期末在庫率を求めれば、03~04年度ケースの場合は11億ブッシェルで期末在庫率は約3.6%となるのに対し、平均ケースの場合における期末在庫量は5億ブッシェルで期末在庫率は1.59%にまで落ち込んでしまうことになります。

 この期末在庫量は次年度に期初在庫として引き継がれることになるため、09~10年度の需給も当然のことながら引き締まり、今後、発表される予測値が現時点での7.4%を下回ると予想されることになります。例えば、期末在庫率が11億ブッシェルまで減少する一方、他の需要は現時点の予測と同量と仮定した場合、09~10年度の期末在庫率は6.75%前後が見込まれることになります。

 実際には、価格が上昇すれば旺盛な中国を始めとする輸入国の需要が鈍化する可能性があるため、今後の輸出が平均ケースほどに達する可能性は低いと思われます。しかしながら、ブラジル、アルゼンチンからの輸入が期待できなければ、輸入国側は米国に頼る以外に道はないため、通常ならば南米からの輸出が活発化する影響で米国の輸出が停滞するこの時期であっても、極端なスローペースに転じるとは考え難いのが実状です。

 さらに、降雨のため遅れていた米国中西部のコーン作付は5月下旬にかけて順調に進展しました。これにより、コーンから大豆へと作付がシフトすることで09~10年度の大豆生産量はこれまでの予想を上回る、と期待することは難しくなってきています。供給面における危機的な様相が日増しに強まるうえ、天候というリスクを抱えている大豆市場の場合、上値波乱の可能性に留意する必要があると思われます。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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02月04日更新

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