原油価格上昇で注意したい中国の動向
NY市場のWTI原油は力強い足取りが続いています。5月12日に昨年11月半ば以来となる60ドル台に達した後も堅調地合いを維持し、現地26日の通常取引終了時点における7月限の終値は62.45ドルに達しています。
この原油価格上昇の背景としては、まず、米国の景気底打ち感、特にダウ平均が8,500ドル前後を維持する底固い動きを続けていることが挙げられます。また、4月末までは増加傾向にあった米国内の原油在庫が5月に入ってからは減少に転じていること、さらに、5月末から9月初旬までという本格的なドライブシーズンを迎えることによる需要増加に対する期待なども価格をサポートする要因となっています。
また、米国外に目を向けると、世界第2位の石油消費国である中国の需要が回復傾向を見せると同時に、同国の原油輸入量が増加していることも価格を押し上げる背景となっています。
例えば、ロイター社は中国の4月の石油需要は昨年10月以来、前年度比で初めて増加に転じ、前年同時月に比べて3.9%、前月に比べると3.8%増加した、と伝えています。同社によると、4月における1日当たりの原油需要量は759万バレルとなっています。
なお、中国の二大石油会社によるとして4月には、3月の中国内石油需要が前月比で21%増加したほか、需要の増加が影響して3月末時点の石油製品在庫量は前月末時点に比べて14.7%減少していた、という報が、そして5月上旬には4月末時点の石油製品在庫量は前月に比べて15.4%の減少、そして販売量は5.2%増加していた、と発表されています。
今回、このような石油製品需要増加の報に続いて原油需要量の増加が発表されたことにより、中国国内では政府による景気刺激策が効果をあらわすと同時に、同国経済が回復の兆しを見せていることを示唆している、との見方が強まっています。
なお、今年の1月には、積みあがる在庫圧縮のためにペトロチャイナ社、シノペック社と中国石油最大手の2社が揃って石油製品輸出を積極的に行っていたほか、値下げ合戦を演じるほど需要が低迷していていました。それだけに、需要回復を示唆する報が2ヶ月連続して伝えられたことは、同国の石油需要拡大期待をよりいっそう、強めるものとなっているようです。
しかしながら、直近2ヶ月の中国の石油需要が強気だったからといって、今後も同様の回復が見られるかどうか、に関しては疑問が残るところです。というのも、中国だけでなく、中国にとって主要な輸出相手先国である米国経済の先行きは、依然として不透明感が強いからです。なかでも、かねてから懸念されているGM社の今後の動向に関しては、日を追うごとに破綻の可能性が高まっていますが、同社が破綻に到った場合には、失業率の9%越えはほぼ確実と見られます。
そうなれば、米国の個人消費は、これまで予想されていたよりも長期に渡って低迷することも予想されることになりますが、世界の工場としての地位を確立した中国にとって、米国への輸出回復がなければ、本格的な景気回復を見込むのも難しい、と考えられるのです。
さらに、原油の国際価格の堅調な動きは需要の50%を輸入に頼っている中国の石油業者にとって原油調達コストが上昇することを意味しますが、その一方で、中国国内の石油価格は政府により統制されているため、これらの石油業者は石油製品生産により赤字が発生する可能性が高まる、という中国国内の問題も抱えているのです。
中国の国家発展改革委員会は、5月8日に"石油製品価格は、国際市場における原油価格を基にし、国内における加工コストの平均や税金、そして流通費用と利益分を上乗せしたうえで決定する"、という新たな価格決定方式を発表しましたが、同委員会のXu Lunlin副委員長は、石油製品の価格をすぐに引き上げることを意図しているわけではなく、価格の引き上げは慎重な判断を重ねたうえで実施する、とコメントし、値上げには慎重な姿勢を見せています。
一部では、6月にも石油製品の価格が引き上げられるのではないか、との観測も聞かれているようですが、中国では1月に燃料税が引き上げられたうえ、すでに3月25日には石油製品を引き上げていることもあり、不用意な石油製品価格の値上げは、せっかく盛り上がりを見せた需要を再び後退させかねません。かといって、石油製品生産により赤字が拡大するようであれば、国内石油業者の生産意欲がそがれ、同国の石油需要減退につながりかねません。
現在のNY原油価格の上昇は、米国内の原油や石油製品の在庫縮小と景気底打ちに対する期待感が主な背景になっていることは先に述べた通りですが、行き過ぎた原油価格の上昇は、世界第2位の消費国である中国の需要を落ち込ませかねない、という思わぬ落とし穴がある点にも留意しておいた方が良さそうです。
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