エタノールブームと金融危機で進む米国農作地の変化
世界経済の底打ち感が強まるなか、株式市場は力強い足取りを見せています。例えば3月上旬には6,500ドル台まで落ち込んだダウ平均は、5月に入ってから8,500ドル台に達しています。また、一方の日経平均も一時の7,000円台から大きく上昇し、現在は9,300円~9,400円で推移しています。
しかしながら、昨年9月のリーマンショック以降、世界経済の先行きに対して強まった不安感は、米国中西部における農作物の作付意向にもよりいっそうの変化を与えています。米国農務省が現地5月12日に発表した需給報告では、09~10年度に米国では、綿花の一種で、現在世界で生産されている綿花のおよそ9割を占めているアプランドコットンの作付面積が前年度の929万7,000エーカーから866万8,000エーカーに縮小する、との見通しを示しました。
また、この作付面積縮小にもかかわらず、生産量は前年度の1,238万4,000梱を上回る1,287万6,000梱に達する、と予測されながらも輸出量は前年度の1,200万梱から1,050万梱に減少することが見込まれています。
米国農務省は2月9日に発表した2009年度の農産物輸出予測において、すでに世界経済の落ち込みにより衣料品販売量が世界的に落ち込む結果として、2009年度のコットン輸出額を、昨年11月時点の予測より4億ドル下方修正した360億ドル、との見通しを示していましたが、今回の需給報告においても、世界経済低迷が影響したうえでの輸出減少、という見方が反映されたことになります。
ただ、米国のコットン生産が減少傾向を見せているのは、世界経済の後退が唯一の原因ではありません。原油価格が上昇傾向を強めたことで代替燃料としてのエタノール消費に対する期待が高まった2006年を境に、米国のコットン作付面積は急激に縮小し、その傾向が今なお続いているのです。また、このコットンの減産傾向が強まった時期がエタノール消費に対する期待が高まった年、ということから想像できるように、コットンの作付面積が縮小に向かう反面、コーンや大豆の作付面積が拡大する、という動きが見られているのです。
例えば、コットン、コーン、大豆、これら3種類の農作物が生産されている主要な4州(アーカンソー、ミシシッピ、ミズーリ、ルイジアナ)の作付面積を米国農務省の発表で見ると、エタノールの生産がまだ、今ほど注目されていなかった2002年時点ではコットンが303万エーカー、コーンが4,91万5,000エーカー、そして大豆が1024万エーカーとなっています。
その後、2006年にはそれぞれの作付面積は353万5,000エーカー、353万エーカー、1080万エーカーとなりますが、2007年にはコットンの作付面積のみが大幅に縮小し、今年度においてはコットンが136万エーカーと、2002年時点に比べて約56%もの縮小を見せているのに対し、コーンは9.6%程度拡大した460万エーカー、大豆は12.7%前後の拡大となる1155万エーカーとなっているのです。
従来、米国中西部の南部に位置するアーカンソー、ミシシッピー、ミズーリでは、コーンや大豆の生育は、米国中西部のなかでも主要な産地であるイリノイ、アイオワ、ネブラスカといった州に比べると、5大湖から遠く位置しているため生育に大量に必要とされる水量の確保が難しいうえ、上記の州に比べて高い気温がネックとなってそれほど盛んではありませんでした。しかしながら、エタノールブームを契機とした穀類の価格高騰による利潤性の上昇という魅力の強さ、そして天候不良に対する耐性の高い遺伝子組換種の登場が、これら3州におけるコーンや大豆の作付意欲を後押ししていることが窺われます。
なお余談になりますが、これを別の視点から見れば、本来は生育に向いていない土地でも生育が可能になったほど遺伝子組換技術が発展しているとも捉えることが出来ます。現在、米国中西部ではコーンの作付進捗率が平年の71%に大きく遅れる48%に留まっていますが、作付が遅れても大幅な減産には結びつかなかった08~09年度と同様のケースを想定しておく必要があるように思われます。特に、CFTC報告で見るように、コーン価格が上昇していながらも取組高は減少するなど、資金が流入したうえでの価格上昇では無い点には注意したいところです。
09~10年度に関し、米国農務省は世界のコットン期末在庫率は3年連続して50%を越えてくる、とかなりの高水準に達することを予想しています。米国南部の州、というとコットンというイメージがありますが、エタノールブームと金融危機というここ近年の大きな動きは、米国南部における農産業形態にもジワジワと変化をもたらしており、これからもこれらの州ではコットンとコーン、大豆との間でのせめぎあいが続くことになりそうです。
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