転換期を迎えるかもしれない米国のエタノール産業
現地5月5日、米国環境保護庁(EPA)は、再生可能燃料基準(RFS)プログラムの修正案を、RFS2を発表しました。今回の法案では、2010年にはガソリン及びディーゼル燃料といったこれまでの燃料消費量のうちの8.01%を再生可能燃料に置き換えることが義務付けられたほか、コーン以外の原料から生産されるバイオ燃料の利用義務が0.59%に設定されています。
また、コーンを原料とするエタノール消費については、2007年12月に成立した新エネルギー法がそのまま踏襲され、2015年までに年間消費量を150億ガロンに引き上げることが改めて、確認されました。
さらに注目したいのは、今回発表されたRFSプログラムでは、温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas)の削減義務が盛り込まれた点です。このGHG削減義務というのは、バイオ・エタノールなどの燃料の生産、輸送、ブレンディング、消費など全ての過程で排出される温室効果ガスの量を評価の対象としたうえで、2005年時点を基準とした石油製品のGHG排出量に比べ、再生可能燃料全体で20%の温室効果ガス削減を義務付けたものです。
なかでも、コーンを原料とするバイオ・エタノールにとって頭の痛い問題になってきそうなのが、森林伐採を含めた農地開発といった、生産には間接的とされる影響についても評価の対象となっている点、そして、エタノール生産工場のうちのほとんどが、燃料として化石燃料に区分される天然ガスと石炭を利用している点です。
RFAが2008年に発表した報告によれば、調査の対象となったエタノール生産工場のうち、ドライミル方式で天然ガスを消費している割合は79%に達しています。一方、ウェットミル方式の場合、エタノール工場全体のうち石炭依存率が71.6%に達していると報告されるなど、ドライミル、ウェットミル、どちらの方式においても現時点で化石燃料に依存せざるを得ない状況にあることが浮き彫りとなっているのです。
このエタノール工場による燃料消費を削減するために、EPAでは2000年代初頭からエネルギー使用量と温室効果ガス発生量を削減するプログラムとして熱電力複合供給システムの利用を推進していますが、同庁によると2008年5月現在、稼動しているドライミル方式のエタノール工場が145ヶ所となっているのに対し、このシステムを取り入れている工場は17ヶ所に留まっています。
今のところ、各エタノール工場が排出している具体的な温室効果ガスの量や必要とされる削減量は発表されていないため、現段階では推測の域をでませんが、天然ガスと石炭という化石燃料への高い依存率、そして効率的なエネルギー消費システムの導入率の低さから見ると、今回発表された再生可能燃料基準プログラムの温室効果ガス排出基準を満たせない多くの工場が発生する可能性があるのではないでしょうか。
なお、今回のEPAに先立ちカリフォルニア州大気資源局が低炭素燃料基準を提案しています。2020年までに10%の温室効果ガス削減を義務付けるこの基準では、EPAが発表したRFS2と同様に生産のための土地利用といった間接的な影響までも、評価の対象とされています。
全米におけるMTBE廃止の先駆け的な存在であるカリフォルニアと同州に続く、米国環境保護庁による新基準の発表、という一連の流れは、全米で環境基準の強化が進められ、この動きが今後浸透に向かう可能性を秘めています。その反面この流れは、コーン由来のエタノール生産工場にとって、景気回復の兆しが見えないにもかかわらずエネルギー消費量および温室効果ガス削減のためのシステム導入の必要性、または生産工程を見直す必要性、といったハードルが課されたことを意味すると言えるでしょう。
オバマ政権は、雇用の創出や米国の脱石油化、CO2排出量の削減を図りグリーン・ニューディール政策をかかげています。今回のRFS2の発表もその一環と考えられますが、その方向性次第では、米国のバイオ・エタノール生産業者の将来にとって厳しい政策となってきそうです。
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