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豚インフルエンザでどうなる?大豆市場

 豚インフルエンザの発生が報告されて以来、その感染は世界中に広がりを見せています。読売新聞が30日に伝えたところによると、現在、感染やその疑いがある国は34カ国。そしてWHOは米国でメキシコ以外で初めてとなる死者が確認された、と伝えています。

 この豚インフルエンザの発生が欧州でも報告されるなど、世界的な広がりを見せたことが食肉需要、飼料用需要の減少懸念を強めたことから、現地27日のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通常取引において、大豆先物価格が急落する場面が見られました。

 しかしながら、豚インフルエンザ発生のインパクトはすぐに市場に織り込まれ、現地29日のCMEの取引では大豆、コーン共に大幅に反発し、大豆7月限は1,000セントを回復した1,025セントで取引を終えています。

 このように大豆価格がすぐに反発した背景の一つとしては、これまで触れてきたように、足元の需給ひっ迫感が挙げられます。米国農務省は、4月9日に発表した09~10年度の米国内大豆期末在庫率(需要に対して在庫をどの程度保有しているか、を示す比率)に関し、03~04年度以来、もっとも低い5.5%との見通しを示しています。

 なお、このように期末在庫率が危機的とされる水準まで低下すると予想されているのは、米国内の減産というよりも、米国に次ぐ第2、第3の大豆生産国に生長したブラジル、アルゼンチンに原因があります。この両国が天候不良に見舞われた結果、この2カ国からの大豆輸出が減少する一方、その代替としての米国産大豆需要が増加する、と見られているのです。

 大豆市場は、2000年の農地改革の終了に伴い活発化した穀物メジャーの南米進出に伴い02~03大豆年度以降はブラジル、アルゼンチン両国の大豆輸出量が米国の輸出量を上回っているばかりか、ブラジルが米国に肩を並べる輸出国に成長した結果、米国の独占支配傾向が薄れるという構造変化を経験しています。この変化は、米国内の減産という独自要因で大豆価格が高下するリスクを低下させていますが、その一方では南米諸国の生産状況による影響を受け易い、という状況を生み出しているのです。

 特に、29日にはアルゼンチンのブエノスアイレス穀物取引所が、わずか1週間で2回目となる大豆生産量予測の下方修正を発表したことで、世界的な需給引き締まりに対する懸念が強まり、CME市場での大豆価格上昇の一因になったことが、南米要因が市場に与えるインパクトの強さを象徴しているものと思われます。

 さらに、今後も大豆価格をサポートする要因になると考えられるのが、今春の米国の大豆作付面積は、前年度を上回る見通しとはいえ、需給改善には不十分と見られる点です。現在、米国の主要生産地である米国中西部ではコーンの作付が開始されているものの、雨の影響で、作付けペースは過去5年間の平均を下回っています。

 従来は、コーンの作付が遅れればその後に植えつけられる大豆へと作付がシフトする、との見方が一般的でした。しかしながら、遺伝子組換種の登場で気温の変化に対する耐性が向上していること、そして、農家は今春の作付計画に基づいて、予め農地を整備し種子を購入している点、を考慮すれば、よほどの異常気象に見舞われない限り、当初の作付予定と実際の作付面積が大きく変化する可能性は低いと思われます。そのため、現時点では、09~10年度における米国大豆期末在庫率の大幅改善を見込むのは難しい、と考えられるのです。このような根本的な需給の強さが、今後も大豆市場を支える要因になってくるのではないでしょうか。

 ただ、気をつけなければいけないのは、豚インフルエンザの影響は今後どこまで広がるか、という点です。というのは、一部報道で既に指摘が挙がっているように、豚インフルエンザの発生が底打ち感を強める世界経済にとって新たな脅威となる可能性が高まっているからです。

 例えば、国内ではすでに食用豚肉を自主的に排除する動きも見られ始めていますが、実際に食用需要が大きく減少するようであれば、飼料用需要が減少する可能性が高まりますが、これは世界的な飼料用穀物の貿易規模の縮小を意味することになります。

 また、豚インフルエンザに対する警戒感から各国で旅行などの外出や出張などが控えられることになれば、航空会社を始めとする旅客業、これからドライブシーズンを迎える米国の石油業界にとっては打撃となる可能性があります。さらに、外出が控えられるようになれば個人消費にも影響が出てくるでしょう。

 とはいえ、この豚インフルエンザは鳥インフルエンザに比べて弱毒で致死率はそれほど高くはない、と見られています。また、大豆市場だけでなくその他の市場も既にそのインパクトを織り込み、現時点では市場のムードも落ち着きを取り戻しています。今後、世界的にパニックになるほどの大感染が確認されるようであれば、大豆市場もその影響を免れ得ないと思われますが、根本的に強い需給状況にあるだけに、豚インフルエンザのインパクトがすぐに織り込まれる可能性があることに留意すべきでしょう。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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02月04日更新

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