
米国のコーン需給は慢性的に逼迫か
米国農務省の需給報告にみる米国のエタノール政策とは
米国農務省が現地12日に発表した需給報告では、6月の大洪水の影響が正式に反映される点が注目されていました。というのも、6月後半という時期は、コーンの作付けを行うには適した時期とは言えないものの、当時のコーン価格が史上最高値を更新し続けていたため、現地では再びコーンを作付けするとの声が多く聴かれていたからでした。
ところが、実際に発表された作付面積は7月の発表時点で概要が盛り込まれていたこともあって8,730万エーカーとの予測が発表された前月に比べて30万エーカー程度の縮小にとどまる8,700万エーカーと発表されるなど、大きな変化は見られていません。
その一方で注目されるのが、エタノール生産用としてのコーン需要予測が上方修正された点です。というのも、前月7月に発表されたエタノール生産用コーン消費量は、コーン価格が7ドルを超える場面が続いた6月半ば以降の価格が反映された結果、6月発表時に比べて5,000万ブッシェル引き下げられていたからです。
しかし今回の報告では、7ドル前後から5.5ドル程度まで下落したシカゴ市場でのコーン価格の動向が反映された結果、一度は引き下げられたエタノール生産用コーン消費量予測は一転して上方修正されただけでなく、年間需要の予測値としては過去最大となる41億ブッシェルと発表されました。
今回の上方修正は、原油価格が下落傾向を強めて120ドルを割り込んだ水準にあるとはいえ、最新の米国内ガソリン平均小売価格はガロン当たり約3.809ドルで、前年同時期の2.77ドルを37%上回る水準で高止まりとなっていることが背景と思われます。というのも、原油の下落を受けてエタノール価格が下落した結果、消費者側にとってみるとエタノールを現在の価格水準で見ても、エタノールを混合した方が割安となるからです。
例えば、米国エネルギー省が発表した8月11日時点の米国ガソリン小売平均価格と、米国農務省が発表した8月8日時点のエタノール工場卸価格を基にした上でガロン当たりのガソリン小売価格とE10(エタノール含有率10%のガソリン)を比較してみると、エタノールの方がガソリンよりも14~15セント程度、廉価となります。
さらに、E10 よりもエタノール混合率が高いE85(エタノール含有率85%)になれば、ガソリンに比べて約1ドル前後、廉価となるのです。(*なお上記価格には、エタノール利用に対し設定されているガロン当たり51セントの補助金を含みます。)
この価格差に加え、コーン価格が下落したことでエタノール生産マージンが回復傾向を見せていることを基に、米国農務省は今回の報告でエタノール生産用としてのコーン需要を大幅に引き上げたと思われます。
また、このエタノール生産用需要の上方修正以外にも注目したいことがあります。それは、イールドが過去最大級となる155ブッシェル(エーカーあたり)へと大きく引き上げられた結果、生産量予測が前回の117億1,500万ブッシェルから122億8,000万ブッシェルに上方修正されたにもかかわらず、期末在庫率予測は8.9%と前年度の12.3%を大きく下回ると予想されている点です。
この状況から、米国でコーン生産量が増加したとしても、これに伴いコーン価格が下落すればエタノール生産マージンが回復し、最終的には増産分はエタノール消費で相殺されるというシナリオを米国農務省側は描いている可能性が高いことが窺われます。言い換えると、米国農務省としてはエタノール消費を推進する姿勢を見せているとも考えられるのです。
なお、米国エタノール生産業の最大手であるADM社を始めとする米国のエタノール生産業者の間では、天然ガスを燃料として利用しているため生産コストが上昇している米国のエタノール生産に比べ、採算性の高いブラジルでエタノール生産を行う動きも見られています。
しかしながら米国ではエタノールの輸入関税がガロンあたり54セントに設定されていることがネックとなり、ブラジルからエタノールを輸入しても却って割高となる状況が続いています。今回、米国農務省が示した国内エタノール生産用コーン需要の強気な見通しにはこうした状況も加味されていると思われます。
原油やガソリン価格の動向、コーンの生育状況、コーン価格とエタノール価格の値開き、そして政治的な動きなど、様々な要因が絡み合っているため、エタノール生産用としてのコーン需要が今後どのように推移するかについての予測は容易ではありませんが、需給動向や米国農務省の姿勢を見る限り米国のコーン需給は慢性的にひっ迫した状況が続くことになりそうです。
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