
ガソリン在庫に見え隠れする米国景気の停滞感
米国では今、ガソリンの需要が最も増加する時期を迎えています。7月末時点で発表された米国エネルギー省の在庫報告によると、25日までの1週間における米国ガソリン需要は、前週に比べると13万バレル増加した947万バレルに達しました。
一方のガソリン在庫量は、需要増加の影響もあって前週に比べて米国内のガソリン在庫量も週を追って減少する傾向を強め、7月25日時点の在庫量は前週に比べると353万バレル減少した2億1,360万バレルとなっています。ただ、だからといってこれが米国のガソリン需要が旺盛であるということを示しているわけではないようです。
周知のように米国経済は、サブプライムローン問題を発端にして停滞した状況が続いており、悪材料が出尽くしたとの見方は台頭しても、ダウ平均が1万1,000ドル台で高下し続けているように景気は停滞感が強いばかりか、回復の兆しを示唆する声はまだ聞かれていません。
その一方で、6月~7月上旬にかけての時期にはガロン当たり4ドルを超える空前の高値に達していた米国内ガソリン小売価格は落ち着きを見せ、現在は3.8~3.9ドル前後と4ドルを下回る状況での推移が続いています。ただそれでも前年同時期を約37%上回る価格水準となっているため、とうとう車社会であるが故に世界最大のガソリン消費国でもある米国においてもガソリン離れの動きが加速しているようです。
これを示しているのが前述の米国エネルギー省の発表です。7月末時点の発表によれば、米国内の7月1日~25日間の1日当たりの平均ガソリン需要量は937万5,250バレルに留まっていました。これは、前年同時期の968万7,500バレルを下回るだけでなく、2004年以来の低水準となります。特に、7月上旬以降は米国ガソリン価格が下落し続けた結果、28日時点には3.955ドルに達しているにもかかわらず需要に回復の兆しが見られないことが、ガソリン離れの深刻さを窺わせているように思われます。
なお、このようにガソリン需要が低迷した状況が続いているにもかかわらず、ガソリン在庫量が低下傾向を見せたのは、生産量が減少したことが理由となっています。例えば、今年に入ってからの米国内製油所稼働率が90%を超えたのは年初の第一週目だけで、それ以降は、一年で最も石油需要が増加する夏場を迎えてもなお80%台での推移が続いています。
需要の落ち込みに対し、石油業界自らが供給量を絞って対応している状況が窺われますが、これは製油所稼働率が90%以上に達しても在庫の減少が止まらず、旺盛な需要が供給を逼迫していた昨年、そして一昨年とは明らかに一線を画す動きです。
また、このガソリン離れの影響はガソリン販売以外にも影響を与えています。その典型的な例としては米国内の自動車販売台数が挙げられるでしょう。というのも国土が広大であるうえ、一部の大都市以外、交通インフラを網の目のように敷くことが困難な米国では毎日の通勤にいたるまで車が浸透した典型的な車社会だからです。
その米国での7月における大手自動車メーカーの新車販売台数は軒並み前年同時期を大きく割り込んだものでした。中でもここ数年間の米国内ガソリン需要の増加を先導してきたピックアップトラックの販売台数は、GM社が前年同月比35.4%減、フォード社が同54.5%減と大きく減少していたことが明らかとなっています。
さらに家計に視点を移してみても、米商務省の発表からガソリン価格による家計圧迫の影響が窺われます。今年5月時点には戻し減税の効果もあって3.9%前後に留まっていた家計(可処分所得)におけるガソリン支出の割合は、6月を含めた第2四半期で見ると、4ドルを超えるガソリン価格の高騰や減税効果の吸収が影響した結果、1983年以来の高水準となる4%台に達しています。
これは、ガソリンを初めとする石油製品に対する家計の負担が増すと同時に、所得が上がらなければ他の消費財の購入が手控えられる可能性が高いことを意味しています。この消費者側の心理の冷え込みは、7月における米国の消費者信頼感指数が僅かな回復を見せていますが、当時の米国では住宅バブルのムードが濃かったとはいえ、112.6と約6年ぶりの高水準に達していた前年同月と比べると格段の差がある51.9にとどまっていることが明確に示しているでしょう。
米国では、様々な燃費向上グッズなどに対する関心が高まっているほか、5月29日付けのウォールストリートジャーナル紙が伝えるように、ガソリン消費を節約するために一部の地域では週休3日制が採用されているようです。ガソリン需要に増加の兆しが出てくるようであれば、消費者心理の回復を見込むことが出来そうですが、現状を見る限り米景気の浮上感が強まると同時に米国石油業界に底打ち感が強まるのもまだ先のことになりそうです。
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