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市場価格との連動を目指すガソリン業界の苦悩~高まる東京工業品取引所(TOCOM)のニーズ

 7月19日、国内の石油元売最大手の新日本石油は、今年の10月よりガソリンの卸価格を、現在のコスト積み上げ型から市場連動方式へと移行する、との計画を発表しました。また、23日には出光興産も市場連動性の導入を発表しています。この両社は新方式の採用で原油高騰の影響で膨らんだコストをより早く転嫁し石油事業の改善を進めることが目的の一つとしています。

 それではなぜ、新方式の採用によりコスト転嫁を従来よりも早く進めることができるのでしょうか。それは、これまでのガソリン小売価格の決定は月ごとに行われていたこと、そして卸価格決定のためのベースとなる原油の価格は1ヶ月~2ヶ月程度前の水準が採用されたことで生じていた差を埋めることが出来る点にあります。そして、この差を埋めるために石油業界が動いたのは、国内の石油製品販売の不振が続いていることが理由です。

 石油事業を大きく分類すると、油田の開発や原油の生産が中心となる上流部門と、石油精製、石油製品の販売、石油化学製品の生産などを主とする中・下流部門に分かれています。ここ最近の原油価格の高騰は、石油業界にとって追い風になったとの見方もありますが、実際に価格高騰の恩恵を受けているのは原油の生産に関わる上流部門だけです。

 一方、原油を原料にして石油製品・石油化学製品を生産する中・下流部門にとって、自ら原油を生産していなければ原料としての原油を買い入れる必要が生じます。近年、国内石油大手の石油開発部門シェアは拡大傾向にありますが、依然として中・下流部門が主流となっているため、原油価格の高騰はコスト高という側面をもたらしていました。

 さらに、国内石油業者を苦しめているのが国内石油製品需要の伸び悩みです。なかでも石油製品販売の主流となるガソリンの売上げは数年前から減少傾向にあるだけではなく、今年の場合、価格高騰が追い討ちとなって大きく低迷すると予想されています。つまり石油元売業者は、コスト高と国内販売量の伸び悩みという二重苦に苦しんでいるわけです。

 確かに、石油業者の間では輸出に活路を見出す動きも広まっています。しかしながら、その場合は他国の事情に常に振り回されるほか、為替にも影響を受けざるを得ません。また、肝心の国内ガソリン販売事業が改善にされない限り、業績拡大を目指すことは難しいでしょう。前述の二重苦に悩まされる国内石油業者にとって、市場連動性の採用は他に余地のない選択だったと思われます。

 それでは、実際にガソリン卸価格の市場連動性が実施された場合の影響はどのようなものが考えられるでしょうか?これまでの報道を見ると、ガソリン価格が上昇するリスクが高まることを懸念する声が多く聞かれているようです。しかしながら、これは原油価格が下落すればガソリン価格がすぐに追随する可能性もあることを意味しています。

 例えば、8月のガソリン価格を想定してみると、これまでの方式でガソリン価格を決定した場合には135~140ドルという原油価格水準がベースになると考えられます。実際に元売大手は、8月からのガソリン卸売価格はリットル当たり5~6円と急激に引き上げた181円前後と発表し、その影響で小売価格は180円台後半に達すると予想されています。

 一方、週決め・市場連動型を採用した場合のガソリン卸売価格を(TOCOMの期近限月・週平均価格+ガソリン税53.8円)×1.05(0.5は消費税分)+α(元売・SSのマージンなど)と想定した場合、8月からのガソリン価格は、152円(7月22日~25日間のTOCOM期近限月・終値平均+ガソリン税)+αとなります。実際の卸売り価格は、マージンの程度によりますが、過去の経緯をみるとSSのマージンは4円~5円程度と想定されます。一方の元売のマージンも同程度と考えれば、ガソリンの小売価格は162円前後となる可能性が浮上してくることになります。

 なお、市場連動方式を採用するに当たり、石油業者は従来のコスト積み上げ型からの転換を指摘していますが、"原油価格+関税・石油税+精製費+販売管理費+ガソリン税+輸送費+消費税+元売マージン+ガソリンスタンドのマ-ジン"、というガソリンの価格構成に大きな変化が無い以上、これまでのコスト積み上げ型に比べて価格面には大きな変化は乏しく、敏感に価格が変化するという影響の方が大きいように思われます。特に、国内のガソリン先物市場は次第に規模が縮小してボラティリティが高まっていることは懸念材料でしょう。

 ただ、市場連動性という方針を採用する以上、価格の変動リスクをどこかでヘッジする必要性が高まることになります。その場合、どこでリスクを回避するか、という問題が浮上しますが、新日本石油の西尾社長が"東京工業品取引所の値動きに連動させるのが理想"と語っているところを見ると、東京工業品取引所がその場となる可能性が高く、このような業者の参入が活発化すれば、商品先物市場の流動性・安定性も高まると考えられます。

 石油業界以外でも資源価格の高騰によって膨らんだコスト高を商品価格に転嫁しようとする動きが始めています。資源価格が安定していた時期には見られなかった動きで、一般消費者としては頭の痛い問題です。ただ、より柔軟に国際市場に対応できる体質を築くことを目指すという点でみると、資源価格高騰という波にさらされた今は、国内企業にとっても消費者にとっても重要な時期のように思われます。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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02月04日更新

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