
原油から金へ。商品市場は転換期を迎えつつあるのか。
米国財務省によるファニーメイ、フレディマックという住宅金融公社への公的資金注入というニュースで幕を開けた今週。これに続き、15日の議会証言ではバーナンキ議長が、"住宅市場の低迷"、"原油価格の高騰"などが経済にとって脅威になっているとの見方を示しました。この一連の動きはサブプライムローン問題の根深さを改めて認識させると同時に米国の景気に対する不安感を強めたためドルが下落しています。
当然のことながら、商品市場では為替の動向は重要な材料ですが、今回のドル安にはより深い注意が必要と思われます。というのも今回の動きは米国の景気低迷長期化に対する懸念を手掛かりにしたという側面が、これまで以上に強いと考えられるからです。さらに、"景気が低迷するなかで原油価格が高騰し続けば、いずれは世界最大の石油消費国である米国の石油消費量が減少する"という、これまでに何度か浮上した見通しが現実味を帯びてくると予想されることもその一因です。
すでにIEAは11日に発表した月報で、08年度の世界石油需要見通しを、前回から80万バレル引き下げた8,600万バレルとの見通しを明らかにしました。そして続く15日にOPECが世界の経済成長を3.9%と前回と同ペースに据え置きながらも、今年度の世界石油需要見通しを前回より7万バレル減少した8,681万バレルに引き下げています。
実際には北半球が夏場の需要期を迎えているほか、新興国が経済成長ペースを維持できれば応分の消費量増加が見込まれるなど、需要見通しには不確定な様相が多々含まれます。ただ、景気低迷により需要離れが進行するとの見方が浮上したことで最も懸念されるのは、投機資金がこれを先取りして原油市場離れの動きを見せるのではないか、という点なのです。
この懸念を示唆するように、11日に発表されたCFTC報告では、7月8日時点における、短期運用を主とする従来からの投機筋の買い越し数は7,066枚と前週の2万1,968枚から一気に縮小していたことが明らかとなりました。さらに、米国の景気に対する不安感が強まった15日にはWTI 原油は一気に135ドル台まで売り進まれています。これは、原油価格がかつてない水準に達しこれが経済に及ぼす悪影響が意識され始めた結果、投機資金が流出の動きを見せたことが一因と言えるでしょう。
その一方で、安全な資産運用の場としての強みを見せ始めているのが金です。昨年9月から今年3月にかけて金価格は原油に連動し、一時は1,000ドル台に達する場面も見られていた金も、このところは原油や穀物に比べると勢いが見られない状況が続いていました。原油や穀物に比べると、金は日常的に消費される場面が乏しいため需要増加期待が膨らまなかったことがその背景となっています。
しかしながら、これは需給動向によって価格が大きく変動する傾向が強まった石油・穀物に比べて金のボラティリティが低いことを示す結果となっています。また、景気回復見通しが遠のけば遠のくほど、超長期的に投資できる資産に対する人気が高まると考えられるため、経年変化が無く資産の評価価値が減耗しない金にリスク回避先としての人気が高まるという方向性も見えてくるのです。
この動向はCFTC報告、金ETFの買い付け残高(ニューヨーク、シンガポール、東京、ロンドン、オーストラリア、ヨハネスブルグで上場されているストリートトラック社引き受け分)の双方から窺うことが出来ます。なかでも大きな動きが見られたのが金ETF買い付け残高でした。翌週にバーナンキ議長の議会証言を控えた10日金曜日には1日で46.24トンと急激に増加した結果、現地7月11日に過去最大となる863.88トンを記録しています。そしてこの1日で金ETF市場に流入した資金は19億1,600万ドル(約2030億円)に達しているのです。
なお、米国政府、そして日本政府の調査が示すように現在の商品市場にはかなりの割合で投機資金が流入していると見られます。特に、金、原油などの市場に関しては、資金規模が莫大とされるインデックスファンドの動向に関する詳細な発表が無く、先の両政府の調査から投機筋の市場占有率は30~40%であると推測されるとはいえ、実体は闇に包まれた状況にあります。
これに加え、世界的に石油の需要が最も増加する時期を迎えていること、そして公的資金の注入によって世界的に過剰流動性が更に拡大する(カネ余り現象がさらに強まる)結果、利上げが実施されない限り物価高が進行する可能性が高いことが今後の商品市場の見通しを困難にしています。
ただ、前述のように米国の景気低迷の長期化に対する見通しが強まるにつれ、同国の石油需要減少を見込む声が熱を帯びてきました。そのため、ドル安が原油価格の上昇を促すというこれまでの様相にも変化が生じることになりそうで、これに伴い商品市場もそろそろ転換期を迎えるのかもしれません。
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