
米国のバイオエタノール産業に暗雲か
洪水で高まるコーンの供給ひっ迫
ミャンマーでのサイクロン、四川大地震、岩手・宮城内陸地震、と自然災害の発生が相次いでいます。米国もその例にもれず、米国中西部では降り続く雨の影響で洪水が発生したことが明らかになりました。
今回、洪水が発生したのは、米国のなかでも最も重要なコーン生産地であるアイオワ、イリノイの両州です。その被害状況について米国農業誌の"Farm Futures"は、両州合わせて330万エーカー分のコーン農地が消滅した可能性がある、との見通しを明らかにしました。また現地17日には、アイオワ農業連盟がコーン作付面積のうち130万エーカーが失われた可能性があることを明らかにしています。
この洪水被害の発生を受けて、シカゴ市場のコーン価格は16日に史上最高値となる7.58ドルに達しました。世界的な食糧危機に対する警戒感が強まっていた6月2日時点でさえ、終値が6.1575ドルだったことを振り返ると、現在の価格水準はこれまでの状況からは想定が難しい水準と言えます(なお、昨年同時期は4.20ドル前後です)。
このような水準までコーン価格が上昇したのはいくつかの理由があります。まず、作付開始前から豊作が無ければ世界的な穀物供給がさらに逼迫するとの危機感が強いなか、米国第1位、第2位のコーン産地で洪水が派生したことです。米国農務省が発表している生産高報告によると、両州のコーン生産量は全米のおよそ3割~4割を占めています。
また第2の要因としては、洪水の発生した時期が挙げられるでしょう。というのも、当地でのコーン作付は5月末までに終了するのが最適とされているからです。これから水が引くのを待ってから作付を行うとすれば、最適とされる時期から1ヶ月遅れることになります。コーン生産自体は可能と思われますが、生育時期が平年に比べて大幅にずれ込むため、どうにかこれから作付をし直しても生産量自体の減少は避けられないでしょう。
なお、今月10日に米国農務省が発表した今年度のコーンのイールドと収穫面積を用いて収穫量を割り出してみると、今回の洪水による影響の深刻さが浮き彫りになってきます。今回発表されたコーンのイールド(1エーカー当たりの収穫量)は148.9ブッシェル。
これに330万エーカーの喪失という想定被害面積と収穫面積は平均で9%前後、作付面積を下回るという過去の動向を加味した上で収穫量を割り出すと、約113.2億ブッシェル前後が想定されることになります。最新の需給報告にこの収穫量をそのまま当てはめて期末在庫量を割り出すと、在庫量は2億5,800万ブッシェル。米国の需要のわずか9日分相当にしかなりません。
ただ、実際にはこの水準までの期末在庫量の落ち込みが実現する可能性は実際には低いと思われます。というのも、食糧安全保障上、米国自身が国としてある程度の食糧を確保する必要があるからです。とはいえ、既に7ドル台という歴史的な水準にコーン価格が上昇しているにもかかわらず、米国の輸出は前年同時期を上回るペースで行われるなど、輸入国の需要は引続き旺盛な状況となっています。
そのため、在庫確保のために消費が圧縮される部門として考えられるのが米国内のバイオエタノール生産部門です。米国農務省は08~09年度のバイオエタノール生産用コーン消費量を、前年度を10億ブッシェル上回る40億ブッシェルと予想しています。
しかしながら、米国中西部のエタノール平均価格は年初来の最高値に達しているとはいえ、7.5ドル前後という水準のコーンでエタノールを生産すれば、生産マージンはマイナス、つまりコスト割れとなってしまいます。現在、エタノール生産工場が買い付けているコーンの価格は7ドルを下回る水準と想定されますが、それでもコーン価格の急激な上昇ペースにエタノール価格が追いつくことが出来なければ、マージンの圧縮は避けられないでしょう。また、生産するほど赤字が発生するようであれば、自然とエタノール生産も落ち込み、これに伴いコーン消費量が減少する可能性もあります。
バイオ燃料としてのコーン消費はコーン価格が高騰するきっかけの一つになりましたが、過去に例を見ない水準にコーン価格が達したことは、コーンを原料としたバイオ生産にとっても重い課題となってきそうです。
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